私は実家で猫を飼っていました。
世話は両親が行っていて、私は単に同居者という感じでした。
私と猫の関係は、付かず離れずでしたね。
猫は気が向いた時に、膝に乗ってきてました。私もそのままにしておきます。
飽きたら、膝から降りて、ふらっといなくなります。
何か気にくわないことがあると、爪を立てたり、引っ掻いたりしてました。
今考えると、生傷が絶えませんでしたね。
まあ、私も、来るもの拒まず、去るもの追わず、という性質なので、
猫と私との間では、極めて自然な共存関係が形成されていました。
私は、従属するのもされるのも嫌いなので、
精神的に自立している猫は、ペットとしてちょうど良く、猫派として過ごしていました。
一方、犬には全く興味がありませんでした。
全く可愛いとも思いませんでした。
また、人と犬との間の従属関係が嫌いでした。
犬に対しては、
「しっぽを振ってないで、自立しろ!自立!」と思ってましたし、
飼い主に対しては、
「家来を付けて、鼻を延ばしてるんじゃねーよ。知的レベルが低いなぁ。バカじゃねーの?」
と思っていました。
ところが、
嫁と一緒に住む人ようになってから状況が変わります。
嫁が犬を飼っていたのです。
私は犬と生活することになりました。
はじめは、ちょっと戸惑いましたが、来るもの拒まずの性質なので、すぐに慣れてきました。
慣れてくると、犬の良さがわかってきました。
感情が人に近く、いや、人よりもずっと優しく、細やかなんですね。
これには驚きました。
また、恩を忘れずに、それ以上に返してくれるんですね。
これは、知識として知っているのと、実際に体感してみるのとでは、全然違います。
ちなみに、この犬が亡くなった時には、私は泣きました。
電車内にいるときに、メールで亡くなった知らせを受けたのですが、
電車内で、いい歳こいたオヤジが泣きました。
家に帰ってからも、棺に入れる時も泣きました。
私は、泣き虫オヤジと化しました。
しばらくの間、私はペットロス状態になりました。
いつの間にか、私は愛犬家になっていたのです。
そして、耐えきれなくなって、また新しい犬を飼い始めました。
今とても可愛がっています。
かつて犬嫌いだったことが、不思議に思えます。
人は簡単に愛犬家になります。
愛犬家にさせるものを、犬は与えてくれるのです。